大阪府吹田市の上野司法書士事務所(江坂相続遺言手続きセンター)です。
特別受益の制度
特別受益という制度を皆さまご存知でしょうか?
別ページでご説明しておりますが、相続というと、例えば妻との場合であれば、妻が2/4、お子様が1/4ずつが相続分であるというように「相続順位と相続分」が重要なことの一つではないでしょうか。
しかし、相続のご相談を受ける際に、良く耳にするのが、「兄は、大学に行かせてもらって学費をだいぶ親が出していたとか、妹は結婚の時に高価な嫁入り道具を買ってもらっていたのに、自分の相続分が同じというのは、なんだか納得できない」というようなお話しです。
相続については相続分を一応法定(法定相続)若しくは相続分の指定をすることにより安定した制度となっておりますが、しかしながら上記のような特殊な事情がある場合には、これらの利益は相続分の前渡し的な性質であると考え、これらの利益を相続分から控除するものと民法は規定しています。これが特別受益の制度です。
ただし、特別受益については、遺産分割協議の際に主張していくことが考えられますが、主張する者や否定する者の感情によるところが大きく、あまり特別受益を意識した協議をされると遺産分割協議が不成立となるばかりでなく、親族間の争いへ発展しかねない可能性が多分にあることに注意が必要です。また、特別受益に争いがある場合には、家庭裁判所への審判を求めることが考えられますが、特別受益の算定は難しいものと考えられます。
誰が特別受益者となるのか
下記では、特別受益について、簡単な説明を補足致します。
特別受益者は共同相続人の中で、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者とされています。
なお、相続放棄をした者は、初めから相続人とはならないものとみなされるため、特別受益者とはなりません。
特別受益者がいる場合の相続財産の算定方法
特別受益者がいる場合には、被相続人の相続開始時の財産の価格に、当該特別受益とされる財産の価格を相続財産とみなし、特別受益者の相続分は法定相続分若しくは指定相続分の中から特別受益とされる財産の価格を控除した残額とされます。
なお、特別受益については、被相続人が、異なる意思を表示した時(遺言等)は、遺留分に関する規定に反しない範囲内で、その効力を有するとされており、特別受益による持戻しを免除することが可能です。
遺産分割協議をされる際に、特別受益のことを頭の片隅にでも残され、お話し合いの中で、アイテムの一つと主張するのに役立てていただければと思います。相続が、良く聞く「争族」にならないようにだけお気を付けください。