大阪府吹田市の上野司法書士事務所(江坂相続遺言手続きセンター)です。
今日は特例方式の遺言書の3つめを紹介いたします。
先日ご紹介いたしました
です。
特別方式の遺言③:在船者の遺言
今回は、4種類の特別方式遺言のうちの「在船者の遺言」についてご案内したいと思います。民法第978条以下に規定があります。
条文では、「在船者の遺言」については「伝染病隔離者の遺言」の次にあります。条文の内容としては「伝染病隔離者の遺言」に非常によく似た規定となっています。
まず「伝染病隔離者の遺言」が交通を断たれたところにいる者について、公正証書遺言や秘密証書遺言を作成することが難しい為に特別な方式である伝染病隔離者の遺言が利用することができるとされている一方、「在船者の遺言」についても、在船中のため、通常、船舶の中に公証人はおりません。
公正証書遺言や秘密証書遺言を作成することが難しい為、特別な方式である在船者の遺言を利用することができるものとされています。
当然、在船中の者でも自筆証書遺言であれば作成をすることは可能ですので、「在船者の遺言」についても現実にどの程度これを利用する必要があるのか検討が必要となります。
それでは「在船者の遺言」の要件を見ていきたいと思います。次のとおりとなります。
要件
在船中(船舶中)に在る者であること
※船舶については航海する船舶であり、湖川航行の船舶等は含まないとする見解がありま
すが、通説は航海する船舶に限らないとされています。
船舶中に在る者とは乗務員、乗客や一時的に便乗した者などいずれも含まれるとされて
います。また船が航行中か碇泊中かは問われないとされています。
船長又は事務員及び証人2人以上の立会いが必要
※事務員とは船員法第3条①より航海士、機関長、機関士、通信長、通信士、及び国土交
通省令で定めるその他の海員とされています。
遺言者が遺言を作成すること
※民法第976条「死亡の危急に迫った者の遺言」のように、遺言をしようするときは証人
の1人へ遺言の趣旨を口授し、口授を受けた者が筆記し...というような規定は
なく、条文上では単に遺言書を作ることができるとされているのみです。
遺言関係者全員の署名と押印
※遺言者、筆者、立会人及び証人は、各自遺言書に署名し、印を押さなければならないと
民法第980条に規定があります。但し筆者に関しては代筆が認められるかについては
争いがあるところです。また、民法第981条より署名又は押印ができない者が
あるときは、立会人又は証人はその事由を付記しなければならないとされています。
※死亡危急遺言・伝染病隔離者の遺言と同じく、遺言者が普通方式による遺言をできるようになった時から6カ月間生存するときは、この特別方式による遺言は効力を生じないことにも注意が必要です。